前回は、実際のプロジェクト開始前までの事を書きましたが、今回は、実際のWEBサービスをつくりはじめる。
といった時に重要なポイントを記載します。

WEBサービスの作り方(前編)


  ロードマップの作り方

まず、はじめに全体のロードマップをつくります。

これは詳細なスケジュールとは違い、1か月単位などでよいと思います。
前回も記載しましたが、WEBサービスの構築は、1か月や2ヵ月ではできません。(本来は)
ロードマップをつくるときに、リリース日から逆算してしまう事が多いと思います。
それは、正しい事だと思います。
WEBサービスの構築自体、営利目的であることがほとんどですから、6か月でつくれるものをつくる。といったようにフェーズ分けを行う事が非常に重要です。

最初から、100点のWEBサービスをつくることなど、できません。
それは、Googleをはじめ大手企業のサービスでも同様です。常にバージョンアップしていますよね?
バージョンアップのロードマップを先につくっておく。のは、非常に重要です。
システムエンジニアにとって、先々の拡張が、最初から見えているのと、そうでないのでは、後々にかかる負担が、大きく異なってきます。

よくある例として、

「DB(データベース)に項目を一つだけ追加したい。
一つくらいなら、ちゃちゃっといけるでしょ?」

これ、システムエンジニアに怒られるケースです。

エンジニアにとっては、データ構造の改修は、非常にナーバスになる内容です。
改修前と後で、不整合が発生する可能性など、不具合の発生する可能性が非常に大きいからです。

1つの項目追加でも、最悪、最初から全てのシステム設計を見直さないといけない。といった事もあります。
残念ながら、エクセルのセルを一つ追加する。といったようにはいきません。

実際のロードマップの作成は、

1.機能単位でフェーズ分けを行う。
2.フェーズ毎の各作業を洗い出す。
3.リリースポイントから逆算して表に落とし込む

ここまでが、ロードマップの作成になります。

  スケジュールは、あってないようなもの。

次に、スケジュールの作成にはいります。

ロードマップは、あくまでWEBサービスのリリースまで、リリース後の指標的なものです。
ロードマップに対して、それぞれの担当者に作業を割り振る作業がスケジュール作成です。

実は、WEBサービス開発においては、このスケジュール作成が、大きな落とし穴だったりもします。
前回、システム受託開発とWEBサービス受託開発の違いについて書きましたが、システム受託開発では、つくるものが定義されているので、よほど大きな問題が起きない限り、スケジュール通りに進みます。

WEBサービスの作り方(前編)

しかし、WEBサービス開発においては、そうはいかないのです。
一番多いのは、環境問題です。

これは、実際にあったことですが、AppleのiOSのバージョンがアップされ、想定していたことが、技術的にハードルが上がってしまった。ということが、ありました。
このバージョンの予定が公開されたのが、システム設計時でした。
もう、プロジェクトも進んでいるし、後戻りもできません。

システム受託開発の場合であれば、システムを完成させることが目的なので、納品後、再度対応を検討することになりますが、WEBサービスの場合、そうはいきません。
それが、WEBサービスを利用する人にとって、どの程度の影響なのか?を含め、調査し、対応を考えるだけでも、1週間以上かかります。

これは、どんなに経験を積んだエンジニアやPMでも、完璧に行うのは、至難の業です。
結果として、スケジュールは再検討となります。

  プロトタイプの重要性

スケジュールの再検討で、次に多いのが、最初のRFPから、市場の状況が変わったなどにより、方向性が少しブレる事があります。

例えば、画面デザインなども、その一つです。
そのため、弊社では極力、プロトタイプをつくるようにしています。

プロトタイプの作り方や、どこまでつくるか?については、また別の機会に書きます。

実際にプロトタイプが出来上がり、全員で使ってみると、色々と意見がでます。
これは、当然のことです。
最初に意思疎通を行っていても、【人と人】ですから、多少の行き違いはあります。
そして、それが【人と人と機械】だったりすると、大きなズレになってしまうケースもあります。

そのための、プロトタイプの構築です。

ただし、プロトタイプをつくるということは、リリースに向けては多少、回り道になってしまうケースもあります。
昨今、アジャイル開発と呼ばれる開発手法を用いることで、意思疎通のズレをなくしていく。
といわれていますが、実は、アジャイル開発の場合も、一般的なシステム開発(ウォーターフォール型)に比べて、費用も時間をかかってしまいます。

個人的には、アジャイル開発を用いるのであれば、最初からプロトタイプ構築をロードマップに組み込んで、ウォーターフォール型で構築する方が、リスクが少ないと思います。

残念ながら、アジャイル開発には、そこに参加する全員の高度なエンジニアスキルが、求められます。それは、受注側だけでなく、発注側にもです。
そういった、プロジェクトは、非常に稀であり、アジャイル開発という名の、単納期ウォーターフォール型開発になってしまっていることが、ほとんどです。

  PM(プロジェクトマネージャー)の大切さ

WEBサービスの開発においては、様々な紆余曲折がつきものです。
これらを全てコントロールするのが、PMの役目です。

ハッキリ言って、システム受託開発のPMとWEBサービスの構築のPMでは、全く異なります。
後者をキチンと行える人を、私はあまり見たことがありません。

WEBサービス構築におけるPMに必要なスキルや経験としては、

・ビジネス構築経験
・エンジニアスキル
・プロモーション・マーケティングスキル
・CS構築経験
・営業経験
・そして、もちろん、システム受託開発のPM経験

は、最低でも必要です。

更に、

・利用規約をはじめとした、法的リスクの把握
・売上や費用に関する会計上のルール策定のためのスキル

こんな人、いるの?って思うかもしれませんが、います。
私自身も、一応全ての経験を積んできたからこそ、自社でWEBサービスの構築を行えています。

 




 

  終わりなきゴール

サービスリリースを迎えるところまで、来たとしましょう。

実は、ここからが、大変なのです。
どうしても、

リリース=ゴール

というイメージが強いのですが、WEBサービス構築の場合、ここからが本番です。

実際に、サービス提供を開始してみると、様々な問題点が見つかります。
ユーザーというのは、想像をはるかに超えた使い方をするものです。
私自身も、様々なWEBサービスを使っていますが、サービス提供側からしたら、嫌な客なんだろうなーって、たまに思います。

ここで重要なのが、顧客離れを防ぐか?です。
不具合やサービスの限界などにより、顧客からのクレームなどは、多々あることです。
しかしながら、ここで登場するのが、CS(カスタマーサポート)です。
WEBサービスにおいて、CSチームは、神様です。

海外のWEBサービスは、割り切っているところが多く、問い合わせなどもメールしかない。
更には、返信さえ、いつくるか?解らない。といったことが、多いです。
そして、日本国内のサービスも、それを良かれと思って真似をしているWEBサービスを目にします。

サービス提供って、なんでしょうか?
私は、このCSの対応を含めて、WEBサービスの良し悪しだと思います。

どんなに優れた機能やサービスでも、顧客は離れていってしまいます。

さて、もう一つ重要なことがあります。

それは、バージョンアップです。
これは、WEBサービスである以上、避けて通れない事です。

ブラウザやOSなどの環境のバージョンアップに伴ったものが、一番多いと思います。
それ以外にも、個人情報や税率の変更など、法的な変更によるものや、トレンドの変化によるもの。

最後に、一番大切な事です。

弊社にも、よく既存のWEBサービスの改修の依頼がきます。

ハッキリ言って、通常では、お受けしていません。
なぜなら、元々のシステムの調査だけでも1か月以上はかかるからです。

そして、既存のWEBサービスの改修の依頼の理由のほとんどが、運営側のコストの問題です。
コストの問題があるところに、システム調査だけで1か月以上かかるといっても、そのコストさえない。といったケースがほとんどです。

これは、最初のビジネス構築からして、失敗しているということです。
【ベンダーロック】というのを、悪い事だと考えている人も多いです。
しかし、それは安定したサービス提供においては、とても重要な事であり、ベンダーをロックできるという、考え方に意識を変えたほうがよいと思います。

WEBサービスも、システム開発も、HP制作なども同様ですが、つくることが、ゴールではないのです。

WEBサービスを構築するうえで、この運用の体制と費用をどれだけしっかりと計画できるか?
が、サービス構築成功のポイントです。
WEBサービス開発を外部に委託する場合は、必ずリリース後の作業についてと、作業に対する費用について、しっかりと確認しておくことをお勧めします。

2回にわたって、WEBサービス構築について書かせていただきましたが、クラト株式会社では、自社サービスをはじめ、多くのWEBサービスの構築実績がございます。

クラト株式会社では、【共に創る】ということを大切にしておりますので、是非ご相談ください。

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